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動物・環境ニュース

2021/02/24
交通の騒音がもたらす野鳥たちのさえずりへの影響
 アメリカから交通騒音が、野鳥たちの生活に影響を及ぼしているという研究結果のニュースが届きました。このニュースによると、アメリカのオレゴン州パシフィック大学のクリストファー・テンプルトン教授が行った実験の結果、交通騒音がある・なしで、ゼブラフィンチ(キンカチョウ)の餌の採集能力に差が生じたというのです。
 テンプルトン教授の実験では、録音した交通騒音を飼育下のゼブラフィンチに騒音あり、騒音なしの条件で聞かせると、騒音ありの場合、餌を探す能力が低下し、その差は2倍にもなったそうです。騒音による悪影響はゼブラフィンチだけでなく、ほかの種でも同様にみられると考えられ、私たちの身の回りにいる生物にも知らぬ間に悪影響を与えているかもしれません。

 別の研究では、実際に交通騒音によって、コオロギの求愛の鳴き声が妨げられ、繁殖相手を見分ける能力が損なわれているという結果報告もあります。
さらに、海洋でのソナーや地震調査、船舶の往来の騒音などが海洋生物のコミュニケーションが途絶えることも明らかになっています。

 ケンブリッジ大学の動物学者アダム・ベント博士は、「何十万年もの間行われてきた仲間同士のコミュニケーションに、交通騒音が大規模な混乱を引き起こしていること、長期的に多大な悪影響を及ぼす恐れがあること」に対し、警鐘を鳴らしています。また、イギリスのケンブリッジ州のアングリア・ラスキン大学のソフィー・モウルズ博士からは「人為的な騒音の発生は、環境の特性を絶えず変化させている」との発言もあり、騒音は生物環境に関わる深刻な問題であると言えます。

 新型コロナウイルスによる都市のロックダウンでは街が静かになり、野鳥たちのさえずりが変化していました。
 今後、私たちが通常の生活に戻れば、再び都市部は騒音が大きくなり、野鳥たちに影響を及ぼすでしょう。
交通騒音の削減は困難な課題ですが、テンプルトン教授は路面や車のタイヤのデザインを変えるなど、騒音を低減させるための工夫の余地はまだまだあると語っています。
 人間の生活が豊かになる半面、原住の野生動物たちへ悪影響を及ぼしてしまう現実があるのは事実です。しかし、科学技術が発達した今、人間と野生動物が本当の意味で共生できる環境を作ることも決して不可能ではないと私達も考えています。
今後、技術の開発により交通騒音の影響が低減されることを期待したいと感じました。

情報提供者:大谷 碧



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