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NPO法人ジャパンワイルドライフセンター(JWC)は野生動物の保護を目的として設立された野生動物保護団体です。

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動物・環境ニュース

2020/07/22
コロナ渦で浮かんだ闇
 最近また新型コロナウィルスの感染者数が増加し、心休まらない日々が続いていますが、動物業界でも今回の新型コロナウィルスにより散見した“ある問題”を早急に見直すべきだとして注目されています。

 世界でパンデミックを発生させている新型コロナウィルス(covid19)について、環境保護の専門家たちは、中国で野生動物を売買するマーケットが発端だという説が有力と考えています。これについては、日本でも話題になりましたが、皮肉にも人類を脅かす新型コロナウィルスが、絶滅の危機に瀕している野生動物売買の抑制に関わる分岐点となったことは確かなようです。

 ある野生動物保護団体のAdam Peyman氏がベトナムのレストランに入った時に、彼は、メニューを見て驚きました。米やヌードル、魚介類とともに、野生動物、しかも絶滅の危機に瀕している動物までメニューに載っているからです。ヤマアラシ、スッポン、野生の豚そして山ヤギなど。しかし、ベトナムでは、これらの食事は豪華なものと位置付けられていて、他のアジア諸国でも、エキゾチックな肉を食べることは、裕福な証とされています。食材や薬として重要な位置を占める野生動物への欲求は、更に野生動物売買を駆り立てます。しかし、特に野生の哺乳類の消費は、人間の健康に真の脅威を投げかけます。何故なら、種間のバリアを超えて病気のキャリアーとなる可能性があるからです。

 Wet markets(ウェットマーケット)は、東南アジアの国々、特に中国本土でよく見られる光景です。人々の活気に満ち、新鮮な野菜や果物はもちろん、鮮魚、ニワトリそして野生動物などが売られています。このマーケットの名の由来は、これらを保存するのに氷が使われ、それが溶けて床が濡れることからきていますが、同様に屠殺時の床の血を掃除することからもきています。
ロンドン動物協会のAndrew Cunningham氏は、このような不衛生なウェットマーケットは伝染病の時限爆弾になり得ると話しています。さらに、我々人類は、野生動物を乱獲し、あたかも自分たちの産物かのように野生動物を取り扱ってきた現状を鑑みると、次は我々が野生動物を含めた自然界からの報復を受けたとしても何の驚きはない、と述べています。

 現在のコロナウィルスのパンデミックは、大多数の感染者と死亡者を出していますが、武漢のシーフードマーケットから始まったという説が有力とされています。 
新型コロナウィルスについては確かな起源はいまだに謎のままですが、他の動物宿主を介して複雑なプロセスを経て人間に伝染したとも考えられています。

 中国政府でも武漢のシーフードマーケットの危険性を踏まえ、野生動物を食肉として消費することを禁止する法制化が進んでいます。ヤマアラシ、ジャコウネコ、カメなどの多くの飼育農場は閉鎖されました。しかし、あくまで食用を目的とした売買を禁止するに留まり、薬やペット、研究のための野生動物の売買は可能なままなのです。

 野生動物の売買にスポットライトが当たったのは今回が初めてのことではありません。2002年に中国で発生したSARS(SARS-CoV)では770人以上が亡くなりました。この時は、コウモリとハクビシンが疑われましたが詳細は未だ解明できないままでいます。

 新型コロナウィルスは、まだ収束すらしていませんが、Cunningham氏は、将来、再びパンデミックをもたらさないために、結果とともに原因に注目しなければならないといいます。
例え、森林を保護したとしても、そこに生息する野生動物はマーケットに流れ、消え失せてしまいます。指摘することは簡単ですが、実際には中国に限ったことではなく、アメリカやヨーロッパ、アメリカ、東南アジアなどその他の多くの国々でも起きている事実です。
記事の最後にも書かれていますが、今販売されているエキゾチックなペットの多くは野生で捕獲されています。
他の生物の命、延いては自分たち人類の命を危険に晒した上で手に入れたものに、いったいどれほどの価値があるのか。私達は今まさにその問題と直面しているのではないでしょうか。

情報提供者:折原美子



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